日本の企業が世界に出るときに足りないものは何か。そのひとつが“クリエイティビティ”だとしたら、どうしたら乗り越えていけるのか


未開拓の日本の可能性を世界と繋ぐことをミッションとするKitchen & Companyの中道大輔がナビゲートするPodcast「VISION TO THE FUTURE」とForbes JAPANがコラボレート。国内外で活躍する“視点”のあるゲストとともに、考え、発信していく。
Vol.44配信は、前回に引き続きOsborn & Mori Partners のPartner & Representative Director Henry Osborn。前編で彼は、日本企業がグローバル化して生き残るには、若い世代に責任を持たせ新しいことに挑戦しやすい企業風土を醸成する必要があると語った。今回のテーマは日本の可能性について。
中道:前回に引き続きOsborn & Mori Partners のPartner で Representative Director のHenry Osbornさんをお招きしています。
前回はいかに日本が変わらなければいけないかについてお話しました。いろいろと課題はありますが、私はまだ日本には可能性があると信じています。経済規模はまだ世界の中でも上位の方ですし、豊かな歴史的背景や文化的背景を持ち、それが教育や人々の考え方、行動様式につながっています。日本の平均的な生活水準は世界でもトップレベルです。
ヘンリー:まったくそのとおりだと思います。日本に来ている外国人旅行者と話をすると、物事は時間どおりに動くし、すべてが清潔で、物価はかなり安くリーズナブルな値段でおいしいものが食べられる。他の国と比べて非常に安全だと言います。
しかし、統計を見ると、2050年までに日本の人口の3分の1が65歳以上になると言われています。また、世界のGDPに占める日本の割合は、20年前は14.5%でしたが、現在は4%で、今後15年以内に3%程度まで下がると予測されています。経済が縮小し人口が減少するなか、日本企業のリーダーや政治家たちが視野を広げ新しい考え方のもとで変革を起こさない限り、切迫した状況に直面することになるでしょう。
先日、岸田首相は「人口減少は危機的状況にある」と言っていました。しかしこれは20年も30年も前から言われ続けてきたことです。結局のところ、日本が世界とともに成長していくためには、日本という国が世界と一体化していく必要があります。そして、そのために何を行い、何を変えていかねばならないのかを問わねばなりません。日本がこのまま孤立し続けるなら、日本を支えるだけの経済力は失われ、社会はうまく機能しなくなるでしょう。

中道:多くの日本人は、日本は素晴らしい場所だと思っています。美しく清潔で安全、おいしいものもたくさんあります。でも日本の人たちは、外国の人たちが日本についてどう考えているのかを知りません。それを知るために、また日本人というものをより理解するためにも、一生に1度か2度は日本の外に出るべきだと思っています。
ヘンリー:日本の文化は独特です。日本ではほとんどの人が同じ社会習慣を持っているので、人々はとても似ています。だからこそ、日本人としてのアイデンティティを明確にするには、日本から一歩踏み出す必要があります。その時に、どんな意図で国外に出るのか、一歩引いて考えてみる必要があります。
最近、学生時代にニューヨークに行ったことのある2人のリーダーと話をする機会がありました。1人は学者で、ニューヨークでは英語で学ばなければいけないので勉強についていくのがとても大変だったそうです。彼は1年間アパートの自室で勉強し、帰国します。その時「ああ、ニューヨークも日本と同じだった」と思ったそうです。その後、彼は日本企業に入社し、グローバルへの興味を失ってしまいました。
もう1人のリーダーはサッカー選手で、大学生くらいの年齢でニューヨークに出て、地元のサッカークラブに入りました。週末には試合に出て、そのあとは仲間と酔っぱらっていました。彼はギターを弾いたので、バンドにも参加しました。バンドの人たちから他のキャンパスでの活動も紹介されました。彼は英語の勉強にあまり時間を割きませんでしたが、現地の友だちがたくさんいたおかげで英語が得意になりました。
それから25年ほどが過ぎ、1人は今グローバルリーダーとして大成功を収めていますが、もうひとりは正直言ってかなり平凡でした。このように結果をわけたのはマインドセットの問題だと思います。
日本の外で素晴らしい経験をして自分を成長させ、その経験によって、地球市民に近づくことができるか。交換留学生制度で留学しても、企業がグローバルな経験をさせるため社員を海外に派遣しても、問題は彼らがそこで何を身につけてくるかということです。英語も現地の言葉も学ばず、ただ日本のコミュニティの中で数年業務に携わるだけでは、何の成長もないまま帰国することになるでしょう。